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第2巻第17話 蘇瀝(トーリック)川の伝説

・派遣されてきた将軍高駢(カオビェン)が、蘇瀝(トーリック)川に城を作るも、土地の神様に邪魔されて苦戦する話
・蘇瀝(トーリック)川はハノイの西から南に流れる川

●高駢(カオビェン)大羅(ダイラ)城を建設
 唐の懿宗(イートン)帝は、咸通(ハムトン)6年に、高駢(カオビェン)を都護将軍(ドーホトゥンクアン)に命じ、南詔(ナムチェウ)の敵を倒すために将兵を送りました。高駢(カオビェン)が戻った時、帝は靜海(ティンハイ)軍を嶺南(リンナム)(嶺安)の城塞に置き、高駢(カオビェン)を節度使(ティェトドスー 司令官)としました。
 駢(ビェン)は天文と地理に通じていて、土地の地形を見て、瀘江(ローザン)の西に周囲が30里の大きさの大羅(ダイラ)城を建設しました。瀘江(ローザン)の支流が西北に流れ込み、南に回って、大羅(ダイラ)城を囲み、そして再び主流に戻ります。

●川の名を蘇瀝(トーリック)に
 当時、6月中旬には雨水が多く溢れました。駢(ビェン)が小さな船に乗り込み、流れに乗って支流に入り、1里ほど行ったところ、突然、白いあごひげと白い髪の老人が、奇妙な外見で川の真ん中で水浴びをしていました。そして笑って話します。
 駢(ビェン)は名前を教えてくれるよう頼みました。すると「姓は蘇(トー)、名は瀝(リック)。」と答えるので、駢(ビェン)が再び「家はどこか」ろたずねると「この川の中である。」と答えます。言い終わると、手をたたき水しぶきを上げて、忽然と姿を消しました。駢(ビェン)は、これは神人であると考え、この川の名を蘇瀝(トーリック)と名付けました。

●高駢(カオビェン)帰国へ
 また別の日の早朝、駢(ビェン)が大羅(ダイラ)城の東にある瀘江(ローザン)川のほとりに立っていると、強い風が吹き荒れ、川の水がうねり、空が雲って暗くなり、不思議な人が水の上に立っているのを見ました。背丈は二丈を超え、黄色い服を着て、頭には紫の冠をかぶり、手には黄金のお札を持って、空中で光を放ちながら、上がったり降りたりします。
 日が高くなっても、空は霧におおわれて暗いままです。駢(ビェン)が恐れて、この神を祓いたいと思うと、夜、夢の中で、神人が言いました。「我を祓うなかれ。我は龍肚(ロンド 龍のへそ)の精であり、地霊の長である。あなたはここに城を建てたが、我々はまだ会っていないので見に来たのだ。我々は護符の術を恐れようか。」駢(ビェン)は驚いて目覚めました。
 翌朝、駢(ビェン)は祈願のための祭壇を設けて、お祓いのために金銅鉄符を置きました。この夜、雷鳴が鳴り響き、風雨が吹き荒れ、空と大地は暗くなり、神将は咆哮し、天と地は震えました。そして一瞬にして金銅鉄符が地上から離れ、灰となって空中に散って行きました。
 駢(ビェン)はさらに驚いて「ここには不思議なた霊異を行う神がいるので、災いを避けるためには、長く留まることはできない。」と嘆きました。その後、懿宗(イートン)は駢(ビェン)を呼び戻しました。駢(ビェン)は処刑され、高鄩(カオタム)が代わりとなりました。